近年「SIer」、そしてSIerの労働力の多くの割合を占める「SE」が「オワッテル」というような話を良く聞きます。
特に聞くのが「海外では」「欧米では」「アメリカでは」「USでは」といった枕詞を付けて構造・仕組みがおかしいという論調[*1]。
「日本では」、「海外と」「欧米と」「アメリカと」「USと」仕組みが違うので単純な比較は意味がありません。
"SIer"が生まれた背景としてはコンピュータシステムが複雑化しすぎて、開発・運用に多くの人的リソースが必要になったということがあります。
そしてユーザー企業の直接的な採算部門ではない技術部門に専門技能を持つ(恐らくそれなりに高給の)エンジニアを雇い入れ、開発・運用するのは難しいです。また特にコストのかかる開発が一段落して運用フェーズに入った段階で労働力が余ると非効率になります。
配置転換や経営の効率化など、解雇を回避する努力を最大限にしないと日本では解雇が難しいため、アウトソース先の需要が生まれました。
SIerの仕事のやりかたがおかしいということであれば市場原理が働いて[*2]オカシイ企業は淘汰されていくので心配ありません。現在のSIerの姿は市場原理が働いた結果(または過程)であり、SIer自らが進んできただけでなく、ユーザー企業が望んできた形と言えます。
使っているテクノロジーが古いとか、開発のスタイルが古いといった「過程」は、多くの場合「結果」に注目するユーザーにはあまり興味のないこと。
開発に非効率な部分があるとすれば意図しているかしていないかにかかわらず収益構造上必要である場合も多くあります。
システムエンジニア、というよりは「ソフトウェアエンジニア」としてつまらない、効率が悪い、正義に反すると思うのであれば対処方法は4つくらい。
1. 会社のありかたを変える
– プロジェクトの進め方を変える
– 開発手法を変える
– 利用するテクノロジーを変える
– 収益構造を変える
2. 会社での自分の立ち位置を変える
– 自分がやりたいことをアピールして振られる仕事をコントールする
– より自分にマッチする部門へ配置転換してもらう
3. 別のフィールドに理想を求める
– 別の企業に就職する
– 起業する
– (職業を変えるという意味で)転職する
4. グチを言う
一番簡単なのが4.のグチなので良く聞こえてくるのだと思いますが、それでは世界も自分も変わりません。
長期的にはがんばって政治と戦って会社のあり方を変えていく(1.)か、自分を変えていく(2./3.)かを選ぶのが良策。
グチを言うだけで終える場合は同時に自身もその原因である現在の雇用制度の恩恵にあずかって当面安泰な身分でいられることをありがたく思いましょう。
もちろん「だめだよねー」「おかしいよねー」と言うことは一時的にストレスを発散する効果が高いのでグチを言うこと自体を批判しているわけではないです。適度に吐き出しながら自分にとって良い方向を模索していくと良いのではないでしょうか。
しかしSIer/SEといった当事者でない人が外部から批判してもギスギスするだけ。批判してもたいして世界は変わらないのでまぁそんな構造もあるんだ程度に認識すれば良いのではないかと。
[*1] SIerって"System"を"Integrate"せずスクラッチでシステムを作っていることがほとんどじゃないの?とか、"System Engineer"って言葉が意味分からないという批判もあるけど単に日本の近年のシステム開発の文脈の中で習慣的に使われてきた言葉というだけで言葉自体をあげつらうのは「上を向いて歩こう」が海外でイギリスを発祥として「スキヤキ」と呼ばれてるのはおかしいだろうというくらい意味がありません。
[*2] ユーザー側がコスト意識に欠ける場面(税金を使っていてなぁなぁになってるとか・・)など、市場原理が働きにくい場所についてはこのエントリのスコープ外
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